美しいボケ描写にこだわって手作りしたレンズ

趣味の写真は2000万画素で十分という私は、最近の超高画素に開放解像力で対応したレンズに関心はありません。なぜなら、2000万画素のカメラに過剰な高解像力はまったくの無駄で、さらに開放解像力を高めたレンズはそのぶんボケ描写が犠牲になっています。しかもそこに高額な出費。現在、2000万画素クラスのユーザーにとって、これはとても理不尽な問題です。またメーカーは「高い解像力と美しいボケ味を両立」とアピールしていますが、これはカメラユーザーに「ボケ・リテラシー」がないことを逆手にとった宣伝です。そこで私は、真に美しいボケ描写を得るには自分でレンズを作るしかないということから手作りし、そして撮影を楽しんでいます。そんな中からまずは4本を紹介します。

回転絞り式84mmF6.5

約30年前の標準ズーム、ミノルタAF24〜85mmF3.5-4.5を分解し、その第1群を利用して手作りしたレンズで、鏡筒はボール紙です。フォーカシングにはMUKカメラサービスから購入したM42のヘリコイド付きマウントアダプターを利用。そこに不要になったミノルタMDレンズからマウントのみを外して接着。そしてMD→ライカLのマウントアダプターを介してルミックスS5に装着したのが右の写真です。ヘリコイドには、筒状にしたボール紙に滑り止めウレタンを被せたローレットによってフォーカシングの操作性を良くしています。鏡胴中央の赤いボタンが回転絞りの電源スイッチ。撮影時はモーターの回転音が耳障りなのでレンズの前面にUVフィルターを装着して遮音しています。

手作り84mmF6.5の基本構造と回転絞りの効果。ズームレンズは各群ごとに色収差が補正されているので右上の図のように第1群を凹面を前向きにし、最適な位置に絞りを設けると像面も比較的平らで、色収差もないレンズが作れるので写真DIYには最適な光学材料です。レンズの明るさとしてはF4くらいにしたいところですがそうもいかず、F6.5に絞ると球面収差のハロによるレンズの味と画像のコントラストのバランスが最良になります。その絞りを円く切り抜いて使うと写真の円形絞りのように点光源のボケが光の回折と球面収差によってボケの周囲に明暗のリングが生じます。そこでこれをなくすためにギザギザにした絞りを高速で回転させると、点光源のボケが「味があって柔らかい」理想的な光の分布になります。

ルミックスS5のEXテレコンをMサイズ(約1200万画素にクロップ)にて撮影したフレンチラベンダーで、パソコンの画像処理でシャープさを掛けることで周辺までこのようなシャープさになり、背景の柔らかいボケは市販のレンズでは見られない心地よさです。

ミノルタMD→ソニーFEのマウントアダプターでソニーα6500に装着。約126mm相当の画角による撮影で、滲みを伴った後方微〜小ボケの柔らかさによって花が独特の柔らかい雰囲気で撮影できます。

マウントアダプターを替え、富士フイルムX-H1による撮影です。フォーカスを合わせたところは弱いソフトフォーカスレンズ描写のように滲みを伴いながらも繊細なシャープさで、後ボケは見事な柔らかさです。

馬場ロア愛知DX撮影会にて、ソニーα7Ⅲのフルサイズ、デジタルズーム1.2倍にしての撮影で、背景が全画面で均等に柔らかくぼけていています。このような滲みによる味があって柔らかい後ボケは市販のレンズでは、まずお目にかかれません。モデル/小此木ひな(スカイハイプロモーションズ)

120mmF6.9

ケンコーのクローズアップレンズNo.10とNo.2を一体化し、その前方に絞りを置き、鏡筒後端のキヤノンEOSマウントの中に像面フラットナーとしての平凹レンズを取り付けたもので、これをEOS→ライカLのマウントアダプターを介してルミックスS5に装着したところです。鏡筒は外筒の中で中筒がスムーズに回転や前後の摺動ができるようにボール紙で作り、フォーカシングは中筒先端のローレットを持って前後に動かします。丸い絞りを外して十文字絞りに交換することができます。

手作りレンズの断面図とEOSマウントの状態を後ろから見たところです。断面図で紫色の部分が中筒でこれを前後に摺動してフォーカスを合わせます。手作りレンズも凸レンズだけでは色収差が出るし、レンズの向きや絞りの位置を工夫しても像面湾曲によって画面周辺はぼけてしまいます。そこでレンズの後端に凹レンズを置くと、画面周辺ほど厚みのあるガラスを通過するために光路が長くなり、結果として像面はそれだけ平らに近づきます。これが像面フラットナーの効果で、また凹レンズによって色収差もある程度打ち消すことができるので手作りレンズの画質向上にはとても有効な手段です。

像面フラットナーの効果で、上記レンズ断面図のクローズアップレンズNo.10のみで撮影したのが左の画像です。画面中央はコントラストはいいのですが軸上色収差があり、周辺では大きくぼけて倍率色収差もあろます。

像面フラットナーを付加すると画面中央のコントラストは低下しますが画質としては全画面で均一になり、色収差はほぼ打ち消されてなくなり、ボケも均等になります。

アレカヤシの葉を撮影したもので、上の結果通りコントラストは低いですが、手作りレンズとは思えないほど均等な写り方で、背景のボケも滲みつつとても柔らかいです。

十文字絞りに交換しての撮影で、球面収差によるハロが十文字に現れます。いわゆるクロスフィルターによる光条効果とは原理が異なり、点光源が短く現れるので写真として光を自然に強調することができます。

本ウエブサイトのトップに掲載している写真で、十文字絞りによって背景のボケも十文字になります。また使用したレンズの分散度の関係で偶然ではありますが色収差もよく補正されています。

128mmF5.3(Lマウント)

ケンコーのACクローズアップレンズNo.3を第1レンズに、その51mm後ろにシングルメニスカスであるクローズアップレンズNo.3とACクローズアップレンズNo.5を、そして最後端に像面フラットナーとして平凹レンズを配置した手作りレンズです。後ボケが全画面で均等になるような絞りの位置は第1レンズのすぐ後ろで、後方微〜小ボケの滲み方と球面収差によるハロのバランスから明るさはF5.3にしました。フォーカシングはケンコーのマクロテレプラス(ニコンFマウント)のレンズ部品を取り外してそのヘリコイドを利用し、ニコンF→ライカLのマウントアダプターを介してルミックスS5に装着したところです。このマウントアダプターの中に像面フラットナーの平凹レンズがあるのでこのレンズはLマウント専用です。

パソコンでシャープさの調整をしていますが、そのフォーカスを合わせたショウメイギクと穂からその後方微〜小ボケは柔らかく滲み、後ボケもとても柔らかいです。

程よい被写界深度によって、微〜小ボケ領域における心地よいボケ描写は花の写真の新たな魅力になります。

逆光で撮影した紅葉のマンサクで、フォーカスを合わせたところでも滲んでおり、その後方微〜小ボケも見事に滲んで後ボケもとても柔らかいです。

135mmF7.1

 構造に関しては近く紹介しますが、ニコンZマウントで作ったレンズで、おでこを整形したニコンZ5に装着したところです。前枠を外して円形絞りと十文字絞りに交換できます。 

像面フラットナー式で、フォーカスを合わせたところは全画面でシャープです。そして後方は滲むようにぼけていくので、一般的なレンズをやや絞ったときのボケ描写とは大きく異なり、とても心地よいボケ描写です。

十文字絞りに交換し、ニコンZ5をAPS−Cで撮影してさらにトリミングした画像です。十文字絞りによてレンズの明るさとしてはかなり絞っていることになり、そこに球面収差によるハロが十文字となって現れます。

点光源のボケが画面周辺で放射方向に伸びていますが全画面でほぼ均等にぼけています。そして後方微〜小ボケは芯があって滲んでおり、「レンズの味」としては理想的なぼけ方です。